ページを繰るだけで129のディープな旅に誘われる『ザ・フィールドワーク』
カバー写真の、こちらを誘っているように思えてくるさまざまな人々や動物、景色の表情にまず惹き込まれる。上半身裸の人もいれば、めっちゃ防寒着の人もいるし、背景や服装の色合いもバラバラなんだけど、皆、楽しそうなんである。
これは、タンザニアをフィールドにする研究者の方たちに「1日に一つずつ読んでも129日間楽しめます」と、いただいた今年の3月に出たばかりのその名も『ザ・フィールドワーク』という本。出版社は京都大学学術出版会というお堅い感じなのだけど、すごくポップな雰囲気のワクワク感漂う本なのである。価格は税別2,000円。
副題は「129人のおどろき・とまどい・よろこびから広がる世界」。この129人が誰なのかというと「生態人類学会の会員」なのだという。「生態人類学」とはなんぞやというと、本書のあとがきによると「人間の活動を自然とのかかわりの中で、環境の諸要素と緊密な相互関係の総体としてまるごと理解することを基本的なテーマとしています」ということだが、つまりは、人々が暮らす中に入り込んで、混ぜてもらって、フィールドワークさせてもらいながら、人間の暮らしとそれを取り巻く自然のあれこれを解きほぐそうとしていく、ということでは?と勝手に解釈。
本書は、その129人のフィールドワーカーたちによる学術書や論文上ではこぼれてしまうような臨場感あるエピソードと写真付きのエッセイ集なのである。
129人の構成は「老いも若きも中堅も」いて、なので時間軸もけっこう幅広く、フィールドもアフリカは、タンザニアはもちろんのこと、ケニア、ウガンダなど東アフリカだけでなく、ガボン、ナミビア、マダガスカルなどなど、アジア(インドネシア、タイ、マレーシア、ラオス、モンゴル、台湾、中国などなど)、パプアニューギニア、インドラダック、シベリア、メキシコ、カナダ、そして日本などなど、とてもとても多くの地域が現れてくる。
(この段落と2段落めの「」内は本書あとがきより)
わたしは、この本を手に取り、空や天井を見ながら「えいやっ」と勝手にページを開いて読むのが好きになった。タンザニアのドドマにてサンダウェのおばあちゃんが作るムレンダ(ネバネバ料理)※1の味を想像したかと思えば、インドネシアは西ジャワ州のスンダ農村で、産婆さんが赤ちゃんを取り上げる※2 のを村の女性たちと一緒に取り囲み、カナダのユーコン先住民の「ハチドリのヒッチハイク」の物語※3 を川べりで聞き、再びタンザニアはマハレ山塊国立公園に戻ってきて野生チンパンジーを追いかけながら催してきたら※4 どうすると焦ったり。。
なんと家に居ながらにして一歩も動かずに、こんなにディープな、ここかと思えばまたまたあちらへの小旅行ができてしまうのだ!
それらの見開きページには、我らが旅先案内人であるフィールドワーカーたちによるそのお話にまつわる大きめな写真も掲載されていて、没入感を深めてくれる。エッセイのタイトルは”案内人”による手書きなので、その人となりが伺えるのもいい感じ。

帯付きカバー
目次には、「あべこべの世界に生きる」「何といっても人は食から」「身体と生死のリアル」「精霊と呪術と死に触れる」「フィールド・サバイバル」「自然の中に豊かに生きる」「動物と身をもって関わる」「自らの問いにこだわる」「かけがえのない出会いと別れ」というセクションにそれぞれ10前後のエッセイが並んでいる。それぞれのセクションの最初のページには、著者の紹介もあるので、もちろん、そこから興味のあるところを読んでいくことだってできる。いろんな入り口からディープな、個人ではなかなか入り込めない旅ができるのだ。
まだ半分くらいしか旅してない(なのでまだまだ楽しみがある)けれど、「分かち合う」ということに関する我らの現在の暮らしとの違いはいくつも現れてくるし考えさせられる。食べることと同じくらい大切だけど見過ごされがちな”排泄”の話もいろいろあっておもしろい。
時空を超え、でも現実に存在する、した人々と、それを取り巻く自然と暮らしを巡る本書の中でできる旅。なかなか味わえない経験の醍醐味がここにいくつもある。世界はむっちゃ広いし、そこから学ぶこともたくさんだなって改めて。
※1「フィールド料理教室」八塚春名 p.52-53
※2「自宅でのお産」関山牧子 P.68-69
※3「ハチドリのヒッチハイク」山口未花子 P.146- 147
※4 「漏らす者たち」松本卓也 p.114-115
*本書は『生態人類学は挑む』という全16巻の最終巻という位置付けの本でもあるそうだ。このシリーズは、「この国の生態人類学を黎明期から支え、牽引してきた故掛谷誠さんのご遺志により、ご夫人の掛谷英子さんからいただいたご寄付によって刊行がかな」ったのだという。(河合香吏さんの「あとがき」による)
掛谷誠さんにはタンザニアでのご自身フィールドからダルエスサラームに出てらしたときに幾度かお会いする機会があった。タンガニーカ湖畔に住むトングウェの人々の社会で呪医に入門し、ご自身も呪医になったすごい方という話は聞いていたが、飄々としたあたたかな雰囲気の方だった。本書にも掛谷夫妻にはじめてのアフリカ(ザイール)に同行してもらったという安渓遊地さん、貴子さんによる「驚くな、怒るな、そこで笑え」(p.234-235)というエッセイに掛谷さんのエピソードが登場する。掛谷さんは、まさにこのタイトル通りにアフリカに関わってこられたのだなと思えるのだった。
これは、タンザニアをフィールドにする研究者の方たちに「1日に一つずつ読んでも129日間楽しめます」と、いただいた今年の3月に出たばかりのその名も『ザ・フィールドワーク』という本。出版社は京都大学学術出版会というお堅い感じなのだけど、すごくポップな雰囲気のワクワク感漂う本なのである。価格は税別2,000円。
副題は「129人のおどろき・とまどい・よろこびから広がる世界」。この129人が誰なのかというと「生態人類学会の会員」なのだという。「生態人類学」とはなんぞやというと、本書のあとがきによると「人間の活動を自然とのかかわりの中で、環境の諸要素と緊密な相互関係の総体としてまるごと理解することを基本的なテーマとしています」ということだが、つまりは、人々が暮らす中に入り込んで、混ぜてもらって、フィールドワークさせてもらいながら、人間の暮らしとそれを取り巻く自然のあれこれを解きほぐそうとしていく、ということでは?と勝手に解釈。
本書は、その129人のフィールドワーカーたちによる学術書や論文上ではこぼれてしまうような臨場感あるエピソードと写真付きのエッセイ集なのである。
129人の構成は「老いも若きも中堅も」いて、なので時間軸もけっこう幅広く、フィールドもアフリカは、タンザニアはもちろんのこと、ケニア、ウガンダなど東アフリカだけでなく、ガボン、ナミビア、マダガスカルなどなど、アジア(インドネシア、タイ、マレーシア、ラオス、モンゴル、台湾、中国などなど)、パプアニューギニア、インドラダック、シベリア、メキシコ、カナダ、そして日本などなど、とてもとても多くの地域が現れてくる。
(この段落と2段落めの「」内は本書あとがきより)
わたしは、この本を手に取り、空や天井を見ながら「えいやっ」と勝手にページを開いて読むのが好きになった。タンザニアのドドマにてサンダウェのおばあちゃんが作るムレンダ(ネバネバ料理)※1の味を想像したかと思えば、インドネシアは西ジャワ州のスンダ農村で、産婆さんが赤ちゃんを取り上げる※2 のを村の女性たちと一緒に取り囲み、カナダのユーコン先住民の「ハチドリのヒッチハイク」の物語※3 を川べりで聞き、再びタンザニアはマハレ山塊国立公園に戻ってきて野生チンパンジーを追いかけながら催してきたら※4 どうすると焦ったり。。
なんと家に居ながらにして一歩も動かずに、こんなにディープな、ここかと思えばまたまたあちらへの小旅行ができてしまうのだ!
それらの見開きページには、我らが旅先案内人であるフィールドワーカーたちによるそのお話にまつわる大きめな写真も掲載されていて、没入感を深めてくれる。エッセイのタイトルは”案内人”による手書きなので、その人となりが伺えるのもいい感じ。
帯付きカバー
目次には、「あべこべの世界に生きる」「何といっても人は食から」「身体と生死のリアル」「精霊と呪術と死に触れる」「フィールド・サバイバル」「自然の中に豊かに生きる」「動物と身をもって関わる」「自らの問いにこだわる」「かけがえのない出会いと別れ」というセクションにそれぞれ10前後のエッセイが並んでいる。それぞれのセクションの最初のページには、著者の紹介もあるので、もちろん、そこから興味のあるところを読んでいくことだってできる。いろんな入り口からディープな、個人ではなかなか入り込めない旅ができるのだ。
まだ半分くらいしか旅してない(なのでまだまだ楽しみがある)けれど、「分かち合う」ということに関する我らの現在の暮らしとの違いはいくつも現れてくるし考えさせられる。食べることと同じくらい大切だけど見過ごされがちな”排泄”の話もいろいろあっておもしろい。
時空を超え、でも現実に存在する、した人々と、それを取り巻く自然と暮らしを巡る本書の中でできる旅。なかなか味わえない経験の醍醐味がここにいくつもある。世界はむっちゃ広いし、そこから学ぶこともたくさんだなって改めて。
※1「フィールド料理教室」八塚春名 p.52-53
※2「自宅でのお産」関山牧子 P.68-69
※3「ハチドリのヒッチハイク」山口未花子 P.146- 147
※4 「漏らす者たち」松本卓也 p.114-115
*本書は『生態人類学は挑む』という全16巻の最終巻という位置付けの本でもあるそうだ。このシリーズは、「この国の生態人類学を黎明期から支え、牽引してきた故掛谷誠さんのご遺志により、ご夫人の掛谷英子さんからいただいたご寄付によって刊行がかな」ったのだという。(河合香吏さんの「あとがき」による)
掛谷誠さんにはタンザニアでのご自身フィールドからダルエスサラームに出てらしたときに幾度かお会いする機会があった。タンガニーカ湖畔に住むトングウェの人々の社会で呪医に入門し、ご自身も呪医になったすごい方という話は聞いていたが、飄々としたあたたかな雰囲気の方だった。本書にも掛谷夫妻にはじめてのアフリカ(ザイール)に同行してもらったという安渓遊地さん、貴子さんによる「驚くな、怒るな、そこで笑え」(p.234-235)というエッセイに掛谷さんのエピソードが登場する。掛谷さんは、まさにこのタイトル通りにアフリカに関わってこられたのだなと思えるのだった。
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