『西サハラの奪われたタコ』

 今年の1月31日付でJETROのサイトに「2024年の日本のアフリカ輸出入」の記事が載っている。
 輸出は南アフリカが1位で、タンザニアは5位。それぞれ自動車(タンザニアへは特に中古車)の輸出が多いそうだ。輸入での首位も南アフリカ(白金族の金属など)だが、輸出ではベスト10に入っていなかったモロッコが4位につけている。(ちなみにタンザニアは10位)「モーリタニア、モロッコ、チュニジアからのタコやマグロの輸入が多かった」という解説文が載っていた。

 上記の記事にもあるように、日本のタコ輸入は、ほぼモーリタニアとモロッコからやってきているというが、モロッコ沖ではタコは取れないのだということが下記のブックレットからわかる。なのになぜ、モロッコから来ていることになっているのか!?

 その矛盾をつくことによって問題を詳らかにしてくれるのがこの西サハラ友の会が作成したブックレット『西サハラの奪われたタコ』だ。「アフリカ最後の植民地」と呼ばれる西サハラ、西サハラ産のタコをモロッコ産として輸入、販売している日本の我々、たこ焼きが好物の我々にも関わっていることなのだ。

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 サハラーウィと呼ばれる西サハラの人々の故郷、西サハラの大部分は、現在、隣国モロッコに実効支配されている。元の西サハラの宗主国だったスペインがその責任を放棄し、モロッコともう一つの隣国モーリタニア(1978年に西サハラから撤退)から侵攻を受け、多くのサハラーウィたちは、命懸けでアルジェリア方面に避難した。それから50年経った今でも、西サハラに帰れず、アルジェリア西北部のチンドゥーフにある難民キャンプにいる。
 1991年に国連安保理決議により、西サハラの地の帰属は住民投票を持って決めるとなったのだが、未だに棚上げされたままである。。 

 ブックレットの目次は以下だ。日本に輸入されているアフリカのタコのことや西サハラの歴史、人々、その天然資源、日本との関係など多岐にわたって読みやすい文章で、幅広く展開されている。

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 それまでわたしは、モロッコ産と表示されて売られているタコは、西サハラ産のものも含まれているという認識でいたのだが、このブックレットを読んで、モロッコ産のタコは全て西サハラの海で獲れたものだと知り、そのひどい偽り方にもう一度びっくりした。東京の魚市場のタコの専門家は「そういえば、モロッコ産のタコはモロッコじゃなくて西サハラてとこでとれてるらしいよ。ダーフラって港に上がるんだって」(ブックレットP.3より)と、ちゃんとどこから来たかを知っているというのに。なぜ?

 果たして西サハラ産のタコをモロッコ産としているのは何のためなのか、なぜそんな偽装が必要なのか、それでプラスを得るのは誰なのか、日本政府がそれを認め続けるのは正しいことなのか、そのことにより多くのものを奪われ続けているのは誰なのか、と。

 「占領支配という体制は、土地を奪い、資源を奪い、土地の主を二級に貶めてこそ存続する」※という言葉が響いてくる。

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西サハラの国旗をシンボルにしたキーホルダー。

 わたしたちの身近な食べ物であるタコが抱えている問題、わたしたちにも関わってくる問題がこの本を読むと見えてくる。書店では販売してないので、取り寄せる必要があるが、それをする価値は十分にある、アフリカ関係者やタコLoverだけでなく、多くの人に読んでほしいブックレットだ。

 🐙ブックレット『西サハラの奪われたタコ』は、下記のサイトから申し込めます。一冊400円(送料210円)です。ぜひ!   
  https://fwsjp.org/archives/6455 




関連ブログ
https://asatanza.seesaa.net/article/202006article_1.html「『抵抗の轍 アフリカ最後の植民地、西サハラ』サハラ―ウィが自由に呼吸するには」2020/6/11 ※の言葉は、この本の149ページから引用した

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