タンザニアのHIV感染者も米国の対外援助資金停止により危機的状況に
HIV感染者のことをスワヒリ語では「watu wanaoishi na VVU」( =HIVと共に生きる人々)(英語でもpeople living with HIVですね)と言う。この言葉には「感染者」で括られるよりももっと前向きな響きがあると感じていた。
しかし、トランプ大統領が1月20日の就任早々、『すべての対外援助を停止する大統領令に署名した。この資金が精査され、「アメリカ第一主義」政策に沿うまで停止されることになった』*1 のだ。。HIVと共に生きる人々が、HIVと共に生きられなくなってしまうかもしれない危機がこの援助停止によって引き起こされてしまうことになる。

このブログとは直接関係がないが、ダルエスサラームの光景
2000年代の初めの数年間まではHIV/AIDSは死に大きく繋がる感染症だった。わたしのタンザニアの友人、知人たちにもこの感染症が原因で命を落とした人たちがいる。すごく辛い出来事だった。が、その後ARV(抗レトロウイルス薬)の出現で、毎日の服用により、治癒させることはできないが、免疫力を高め、感染症とたたかう能力を再生することができるようになった。HIVは前述したように”共に生きる”ことができる感染症となったのだ。
ARVは症状によっていくつもの薬を組み合わせて服用することになり、薬によっても効果は違うそうだが、その取りまとめの効用で、わたしにとって一番わかりやすかったのは「ARVを服用することにより、HIVウィルスを眠らせておくことができる。なので、眠らせ続けるためには毎日欠かさず薬を服用することが大切なのだ」という言葉だった。タンザニアで誰から聞いたのか忘れてしまったけれど、ストンと腑に落ちたのだ。なので、毎日の服用ということがとても大事になる。
タンザニアでは、2005年に就任した第4代のキクウェテ大統領の時代に自分自身が検査を呼びかけるポスターを作るなど、国を挙げての無料のカウンセリングと血液検査のキャンペーンがあり、検査を受ける人は倍に増えたという。ARVが無料で配布される診療所なども増えていった。そういったキャンペーンの資金の多くはPEPFAR(米大統領エイズ救済緊急計画)からのものだった。
All Africaのニュースサイトの2月7日付の記事ではタンザニアでのHIVと共に生きる人たちの現状を描いていた。その見出し”Tanzanians With HIV Left in Crisis As USAID Funding Ends”からこのブログのタイトルを借用した。
この記事の内容をかいつまんで紹介したい。
・19歳のマリアムはバガモヨのクリニックで今までしてきたようにその月に必要なARVを無料で受け取ろうとしたが、ナースに「これ以上の無料の薬はない。次からは自分で購入してほしい」と言われてしまう。彼女の母は野菜の販売が生業で日々の生活費だけで精一杯。マリアムは「薬なしでは死んでしまう」と途方に暮れている。
・2003年以来、PEPFARは、1,100億ドル以上の資金を世界中にHIV/AIDSと戦うために提供してきた。薬だけでなく、教育、予防、検査、コミュニティ支援なども含まれていた。トランプ大統領の対外援助支援の凍結により、数日のうちにタンザニアへの年間PEPFAR資金の4億5千万ドルが消え、約120万人のタンザニア人への無料のARV提供が断ち切られてしまった。
・専門家は、この危機が解決されなければ、今後2年間でタンザニアで少なくとも30,000人の超過HIV関連死が増えるだろうと警告している。
・19歳の時にHIVと診断されたムクワシは、その時には死の宣告を受けた気持ちになったが、無料で提供されるARVの服用により、健康が改善した。無事に(感染させずに)生まれてきた子どもたちを育てながらママリシェ(屋台の料理人)の仕事をしている。しかし、現在、子どもたちに食事を与えるか、薬を買うかの選択に迫られている。が、「薬がなければ、再び病気になり働けなくなる。子どもたちはどうなるの?」と。
・バガモヨ病院のHIV専門の在宅ケアのアドバイザー、メアリーは「何十年もかけてこのプログラムを構築し、HIVは死の宣告ではないと人々に知ってもらえるようになったのに、今、それが崩壊するのを見ている」と語る。。
・しかし諦めてはいない。タンザニアエイズ委員会(TACAIDS)のエグゼクティブディレクターのキャサリンは、他の国際パートナー、民間の寄付、タンザニア政府などから代替資金を見つけるために努力している。「人々は治療を受ける権利がある。あらゆる解決策を検討し、できる限りのことをする」でも「現実は外部の支援がなければ資金は足りない。資金が足りないということは、命が失われることを意味するのだ」と。
*************
この記事通りであれば、やはり、かなり深刻な状況となっているようだ。
別記事*1によると、複数の元USAID長官はこの削減計画を批判しているという。「アメリカは人の生死に関心がない」というメッセージになり、とても危険だと批判している人もいるそうだ。しかし、パレスチナ、ガザの人々を見境なく殺害していくイスラエルに武器供与し、支援を続けていたアメリカはすでにそういうメッセージを発し続けていたのでは?とも思ってしまうが。トランプ大統領の就任で拍車がかかったということか。
為政者が変われば、ガラッと変わってしまう可能性があるという国際援助、対外援助の脆さというものが、見えてくる。しかし、世界は不均衡になってしまっているというか、歴史(収奪、略奪、侵略などの)がそれを作ってきたのだから、”持てる国”は”持たざる国”を支援する義務があるはず。正しいやり方をすれば、それが周り回って自分たちにも返ってくるはずなのに。
*1の記事には『国連のHIV/AIDS対策を担当する国連合同エイズ計画(UNAID)のウィニー ビヤニマ事務局長はBBCに対して、トランプ政権の措置によって世界中のエイズ対策が深刻な影響を受けると述べ、資金提供が復活されなければ「今後5年間でエイズ関連の死者が630万人は増えることになる」と警告した。』とあった。ほぼダルエスサラームの人口と同じ数である。
対外援助の停止により命の危機が訪れるかもしれない人々は他にもももっといることだろう。
USAID、アメリカの対外援助は大統領令だけでは廃止できず、議会の承認が必要となるだろうという解説 もあった。でも再開できるにしても、それまでの時間がかかればかかるほど、被害は大きくなってしまう。大国のエゴにより、これ以上人々が命を奪われることがあっていいのか。そうならないようにするためには、どうしたらいいのだろうか。
※1「米連邦地裁、国際開発局の職員休職求めるトランプ氏の大統領令を一時差し止め」BBCニュース 2025/1/8
https://www.bbc.com/japanese/articles/cqx91jzn50po
しかし、トランプ大統領が1月20日の就任早々、『すべての対外援助を停止する大統領令に署名した。この資金が精査され、「アメリカ第一主義」政策に沿うまで停止されることになった』*1 のだ。。HIVと共に生きる人々が、HIVと共に生きられなくなってしまうかもしれない危機がこの援助停止によって引き起こされてしまうことになる。
このブログとは直接関係がないが、ダルエスサラームの光景
2000年代の初めの数年間まではHIV/AIDSは死に大きく繋がる感染症だった。わたしのタンザニアの友人、知人たちにもこの感染症が原因で命を落とした人たちがいる。すごく辛い出来事だった。が、その後ARV(抗レトロウイルス薬)の出現で、毎日の服用により、治癒させることはできないが、免疫力を高め、感染症とたたかう能力を再生することができるようになった。HIVは前述したように”共に生きる”ことができる感染症となったのだ。
ARVは症状によっていくつもの薬を組み合わせて服用することになり、薬によっても効果は違うそうだが、その取りまとめの効用で、わたしにとって一番わかりやすかったのは「ARVを服用することにより、HIVウィルスを眠らせておくことができる。なので、眠らせ続けるためには毎日欠かさず薬を服用することが大切なのだ」という言葉だった。タンザニアで誰から聞いたのか忘れてしまったけれど、ストンと腑に落ちたのだ。なので、毎日の服用ということがとても大事になる。
タンザニアでは、2005年に就任した第4代のキクウェテ大統領の時代に自分自身が検査を呼びかけるポスターを作るなど、国を挙げての無料のカウンセリングと血液検査のキャンペーンがあり、検査を受ける人は倍に増えたという。ARVが無料で配布される診療所なども増えていった。そういったキャンペーンの資金の多くはPEPFAR(米大統領エイズ救済緊急計画)からのものだった。
All Africaのニュースサイトの2月7日付の記事ではタンザニアでのHIVと共に生きる人たちの現状を描いていた。その見出し”Tanzanians With HIV Left in Crisis As USAID Funding Ends”からこのブログのタイトルを借用した。
この記事の内容をかいつまんで紹介したい。
・19歳のマリアムはバガモヨのクリニックで今までしてきたようにその月に必要なARVを無料で受け取ろうとしたが、ナースに「これ以上の無料の薬はない。次からは自分で購入してほしい」と言われてしまう。彼女の母は野菜の販売が生業で日々の生活費だけで精一杯。マリアムは「薬なしでは死んでしまう」と途方に暮れている。
・2003年以来、PEPFARは、1,100億ドル以上の資金を世界中にHIV/AIDSと戦うために提供してきた。薬だけでなく、教育、予防、検査、コミュニティ支援なども含まれていた。トランプ大統領の対外援助支援の凍結により、数日のうちにタンザニアへの年間PEPFAR資金の4億5千万ドルが消え、約120万人のタンザニア人への無料のARV提供が断ち切られてしまった。
・専門家は、この危機が解決されなければ、今後2年間でタンザニアで少なくとも30,000人の超過HIV関連死が増えるだろうと警告している。
・19歳の時にHIVと診断されたムクワシは、その時には死の宣告を受けた気持ちになったが、無料で提供されるARVの服用により、健康が改善した。無事に(感染させずに)生まれてきた子どもたちを育てながらママリシェ(屋台の料理人)の仕事をしている。しかし、現在、子どもたちに食事を与えるか、薬を買うかの選択に迫られている。が、「薬がなければ、再び病気になり働けなくなる。子どもたちはどうなるの?」と。
・バガモヨ病院のHIV専門の在宅ケアのアドバイザー、メアリーは「何十年もかけてこのプログラムを構築し、HIVは死の宣告ではないと人々に知ってもらえるようになったのに、今、それが崩壊するのを見ている」と語る。。
・しかし諦めてはいない。タンザニアエイズ委員会(TACAIDS)のエグゼクティブディレクターのキャサリンは、他の国際パートナー、民間の寄付、タンザニア政府などから代替資金を見つけるために努力している。「人々は治療を受ける権利がある。あらゆる解決策を検討し、できる限りのことをする」でも「現実は外部の支援がなければ資金は足りない。資金が足りないということは、命が失われることを意味するのだ」と。
*************
この記事通りであれば、やはり、かなり深刻な状況となっているようだ。
別記事*1によると、複数の元USAID長官はこの削減計画を批判しているという。「アメリカは人の生死に関心がない」というメッセージになり、とても危険だと批判している人もいるそうだ。しかし、パレスチナ、ガザの人々を見境なく殺害していくイスラエルに武器供与し、支援を続けていたアメリカはすでにそういうメッセージを発し続けていたのでは?とも思ってしまうが。トランプ大統領の就任で拍車がかかったということか。
為政者が変われば、ガラッと変わってしまう可能性があるという国際援助、対外援助の脆さというものが、見えてくる。しかし、世界は不均衡になってしまっているというか、歴史(収奪、略奪、侵略などの)がそれを作ってきたのだから、”持てる国”は”持たざる国”を支援する義務があるはず。正しいやり方をすれば、それが周り回って自分たちにも返ってくるはずなのに。
*1の記事には『国連のHIV/AIDS対策を担当する国連合同エイズ計画(UNAID)のウィニー ビヤニマ事務局長はBBCに対して、トランプ政権の措置によって世界中のエイズ対策が深刻な影響を受けると述べ、資金提供が復活されなければ「今後5年間でエイズ関連の死者が630万人は増えることになる」と警告した。』とあった。ほぼダルエスサラームの人口と同じ数である。
対外援助の停止により命の危機が訪れるかもしれない人々は他にもももっといることだろう。
USAID、アメリカの対外援助は大統領令だけでは廃止できず、議会の承認が必要となるだろうという解説 もあった。でも再開できるにしても、それまでの時間がかかればかかるほど、被害は大きくなってしまう。大国のエゴにより、これ以上人々が命を奪われることがあっていいのか。そうならないようにするためには、どうしたらいいのだろうか。
※1「米連邦地裁、国際開発局の職員休職求めるトランプ氏の大統領令を一時差し止め」BBCニュース 2025/1/8
https://www.bbc.com/japanese/articles/cqx91jzn50po
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