パレスチナの旗の舞うカフェ-Mellemfolk in オーフス、デンマーク

 昨日のアルジャジーラの報道によると、イスラエル軍に包囲され続けていると言うガザ北部は、病院や学校、果たしては避難所などまでも破壊され、瓦礫だらけの「幽霊地帯」になり、多くの人が殺され、また行方不明となっているという。でもそんな中でも生き延びた人々はそこを離れることを拒否しているというが、イスラエルの国家安全保障大臣やイスラエル人入植者たちは、ガザでのパレスチナ人の立ち退かせ、北部に入植地を作る見通しを公然と話しているという。 
 まさに入植型植民地を推し進めるための民族浄化がなされているという状況なのに、無辜の多く命が奪われ続けているのに、なぜ止められないのだろう。

 アルジャジーラのツイッターアカウントには、デンマークで行われているパレスチナ連帯会議に参加した「即時停戦」を歌う女性の動画が上げられていた。この女性には、娘とわたしは、デンマークで遭遇していた。



 今年の4月にはドイツで働いていた息子に会いに行った時、ミュンヘンにも立ち寄ったのだけど、このブログにも書いたけど、彼の地の市庁舎の前にはウクライナの旗と並んで堂々とイスラエルの旗も掲げられていて、その二重基準の欺瞞を見せつけることを憚らない態度に、ドイツという国に対して鉛を呑んだような気持ちになった。

 デンマークでは、オーフスの図書館にレゴで作られたウクライナの旗と共にあったのは、パレスチナの旗だったので、ちょっとホッとしていた。

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 そして、娘が連れて行ってくれた娘の大学があるデンマーク第二の都市、オーフスのカフェMellenfolk(「人々を繋ぐ」という意味だと解釈してる)には、たくさんのパレスチナの旗が掲げてあった。娘によるとここで働いている若者たちは、皆、ボランティアなのだという。で、彼らにより運営されているというのだ。このcafeのサイト→https://www.ms.dk/en/mellemfolk

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 壁には、「占領を終わらせ、パレスチナに自由を」、「全ての人のための平等と解放」などと書かれた黒板が掲げられ、中には「”ありがとう”ーより公正で持続可能な世界を目指すわたしたちの活動への訪問と支援に感謝します」というのもあった。

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 オーガニックビールやビーガン料理を提供しているカフェ(もちろんコカコーラボトラーズの製品などはない)は、木製のテーブルが置かれ、和やかな雰囲気だ。

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 でもその晩は、各テーブルで、カフェに置いてあるボードゲームに興じる若者たちなどだけでなく、長テーブルには、20人くらいの人々がいて、クリスマスソングの歌詞を「パレスチナに自由を!」などと変えて歌っていた。

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 そのカフェに来る前に街角を通った時、たくさんのパレスチナの旗を掲げた一団を見かけ、心強く感じていた。その人たちがデモンストレーションが終わってこちらに来たのではないかと思った。

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 歌が一区切りついた時、その一団から飲み物を取りに行く女性がいたので、すれ違いざまにそう尋ねてみたら、まさしくそうだったので、親指で「いいね」サインをつくって送った。それが、アルジャジーラに登場していた女性だったのだ。デンマーク人かと思ってたけど、イギリスはウェールズのストリートコーラスのメンバーだったのね。

 カフェでの彼らのコーラスは、幾度も店内に響き、他のテーブルでも一緒に歌っている若者たちもいた。パレスチナの状況は、一刻を争う状況なのだけれども、我らにも日常があり、それを続けながら、自分自身の困難を抱えながらも、応援、支援、連帯する方法を模索していかざるを得ない。この店でのある意味、スローガンはけっこうガンガンだけど、緩やかな繋がり方、肩肘張らない雰囲気があった。歌が一段落ついた時、お母さんらしき人と一緒に来ていた10歳くらいの子どものボードゲームに興じる声が響いたりしてたし、誰でも参加できるよ、お茶やビールや食事をとりにくるだけでも参加になるよと言われている気がした。諦めないこと、続けていくことに意義があるんだよと。

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 実際、店の収益は壁に掲げられたスローガンなどの目標を達成するために、使われるのだという。(大きな母体はAction Aidという世界的なNGOのデンマーク支部だそうだ)ボランティアの若者たちにとっても、ここで、バリスタの腕を磨けるなど、自分の持てる力の向上につながることもできるようだ。

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 娘とわたしも彼らの歌を聴きながら、ビーガンメニューの豆腐カツバーガー(キムチ入り。ポレンタフライ付き)とマッシュルームラーメン(昆布だし、干し椎茸、キムチ入り)をいただく。アジアンテイストのメニューだね。前者は、豆腐でもフライにしてあるし、付け合わせもフライだし、思ったよりもボリュームがあった。後者は昆布ダシなのになぜかちょっと西洋っぽい味のするスープ、でもこれはこれで美味しい。ダシの染みた干し椎茸、旨し。(それぞれ110デンマーククラン=約2,300円。円安なこともあり値は張る。。)

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 かく言うデンマークもトランプ次期アメリカ大統領の発言で脚光を浴びているグリーンランドを植民地としていた。1979年にはグリーンランドに自治政府が成立し、その後、経済的にはデンマークに依存しつつも自治権の範囲を広げているという。が、約300年間にわたるデンマーク統治下では、押し付けられたもの、失われたもの、奪われてきた文化も多くあることだろう。先住民であるグリーンランドのイヌイットの人々を「よきデンマーク人」とするために子どもたちをその親から強制的に引き離して教育したり、人口抑制のための不妊治療をするなど、パターナリズム的な政策が行われてきたという。

 グリーンランド自治政府のエーエデ首相は「(グリーンランドは)売り物ではないし、今後も売り物にはならない」、むしろ「植民地主義の束縛」から解放されるべきと述べているという。

 カフェの中ではコーラスの人々の歌声が続く。耳を傾けながら、ときおり拍手をしながら、デンマークの冬の飲み物というシナモンや八角などのスパイスを効かせたグロッグというホットワインをいただく。そして娘とカフェに置いてあったボードゲームをした。(ジェンダーバイアスと闘うと銘打ったWHO’S SHEは、活躍する女性たちジェーン グトールや日本人では登山家の田部井淳子さんが登場するゲーム。RISE UPという社会をより良くするためのパワーを発揮するゲームなど。前向きなゲームたち!バックギャモンなどのゲームもあったよ)

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 RISE UP というゲーム、我々が初心者だったからか、人々の持つ力を有効に発揮するのがなかなか難しかった。けれど現実世界では、「グリーンランドのことはグリーンランド人が決める」「パレスチナのことはパレスチナ人が決める」その当たり前のことがまかり通る世界であってほしいと切に願う。

 このカフェに集う人々がその力にきっとなるだろうことを期待して。そしてわたしたちも早くは進めなくても歩みを止めないでいたい。

 
 
<参考サイト>

【特集】グリーンランド~世界最大の島で何が起きているのか?(高橋美野梨)発信型ニュース・プロジェクト「荻上チキ・Session」1/13 https://www.youtube.com/watch?v=i1i9MZXwaMg  

グリーンランド百科事典 民博のサイトhttps://www.minpaku.ac.jp/sites/default/files/museum/exhibition/thematic/greenland20140904/encyclopedia_greenland.pdf 

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