アブサロンー同じ釜の飯を知ってる人も知らない人も大勢でいただくin コペンハーゲン
デンマークに留学中の娘に会いに行く前に「デンマークに来たら何がしたい?」と聞かれた。調べていると、元教会だった場所がFolkehust Absalon(人々の家、アブサロン)というコミュニティセンターとなり、そこで毎晩、知ってる人も知らない人も集まった大勢によるCommunal dining(共同ディナー)が開催されていると知り、おもしろそうだと思った。価格も一食60デンマーククローネに押さえられている。(日本円換算すると1,300円くらいになるが、彼の地ではホットドッグ一つが1,000円すると考えれば。しかし日によってデザート付きのメニューの日などは価格もちょっと高めになるようだ)

アブサロンのサイトのトップページ https://absaloncph.dk/en/
アブサロンのディナーはオンラインで予約ができる。(当日の16時まで。残席があれば、当日17時から会場で販売するそうだ)娘に予約してもらった。
アブサロンに予約していた12月16日、ホテルから会場までの時間配分をちょっと間違って遅れそうになり、娘とわたしは焦っていた。ディナーは6時からで、その15分前までに到着していないと、なんと予約が取り消されてしまうのだという。地下鉄のEnghave Square駅から徒歩6分。駅を出た我らは小雨降る中、傘もささずに(デンマークの人はほとんど傘をささない)小走りで急ぐ。急いだ甲斐があって締切2分前くらいに煉瓦造りの建物に到着できた!ホッ。

元教会だったという天井高く細長く広いスペースには、縦長にテーブルがいくつか並べられ、もう多くの人々が着席している。お喋りする声が高い天井にこだましているようだ。
受付のお兄ちゃんに娘が予約名を告げ、我々の座席を教えてもらう。向かって右側の一番端の並びの真ん中辺だった。8人がけのテーブルが5つ縦に繋げられ、それが4列ある。一段高くなっている舞台のような場所にもテーブルが3つか4つ置かれていたから、200人近い人々が一緒に食事をとることになる。

そして、そのテーブルにたまたま居合わせた8人が、食事時間の間、”運命共同体”のようになるように仕掛けられているのだ。
我らのテーブルにはすでに、50代くらいの女性二人組と30歳前後くらいの男女のカップルが座っていた。わたしの座った席の前には8人分のお皿が積み重ねて置かれ、その上にカトラリーも乗せられていた。それを一人一人に配るのはわたしの役目らしい。手渡すときに「どうぞ」「ありがとう」などのやりとりから会話が生まれていくことになる。
同テーブルの人たちは、4人ともデンマーク人で、女性二人組は友人同士でときどきアブサロンに来ているという。そのうちの一人の息子さんは日本人と結婚しているとか。カップルは若夫婦で、夫は昨年日本の大学院に半年ほど留学していて、愛らしい三つ編みの妻も同行していたのだという。なんという日本繋がりの偶然。
あとの二人、遅刻に焦っていた我々よりも後にやってきた彼女らもデンマーク人で、40代後半くらいの女性Aさんと彼女の友人の高校生の娘さんという組み合わせ。Aさんはとても社交的な人で、会場の写真を撮っていた私たちを見て、到着早々「あなたたちの写真も撮ってあげる」と声をかけてくれるのだった。
前回、娘が参加した時のテーブルには外国人が多く、ノルウェーやアメリカから来ていた若者たちがいたと言っていたから、アブサロンディナーでの巡り合わせも時によってさまざまなのだね。

前回、娘が参加した時に撮影。テーブルの並び方や会場の広さがわかる。前回は余裕を持って到着したらしい。
ビールやソフトドリンクの飲み物などの購入もできる。我々はディナーの後、クラフトビール屋にいく予定だったので、ピッチャーに入っている無料のお水をいただいた。
さて、いよいよ6時の開始時間となり、スタッフのお兄ちゃんがマイクを取って、開始の挨拶をする。外国の人もいるから本日はデンマーク語ではなく、英語で話すという。家にいるかようにくつろいで食事をしてねというウエルカムの言葉をもらった後、食事を取りに行く順番を告げられる。我々のテーブルの列のナンバリングが1とされたので、最初に取りに行けるのだなとAさんたちと共に喜んだのも束の間、「2番の列のテーブルの人からどうぞ」と言われ、がっかりして周囲の人々と笑いあうのも一興。

各テーブルで2人が代表してキッチンに食事をとりに行くことになっており、友人女性二人組が立候補してくれた。3つの大皿で運ばれてきたのは、カボチャ、トマト、ピーマン、玉ねぎの野菜シチューとパセリの乗った皮付きの小さなジャガイモのフライ、そしてアイオリソースとオニオンブレッドという家庭料理のような嬉しいメニューだ。(この日はベジタリアンメニューだったけど、肉魚料理が出る日もある。でもそういった時にもベジタリアン用のメニューも用意されているようだ)

取り分けていただく時にも、アイオリソースの中味(ニンニクやライム、卵黄などだそうだ)を若夫婦の夫の方が教えてくれたり、誰かの家に招かれているような、和やかな会話が生まれていく。Aさんは今までいろいろ世界を旅していて、日本にも行ったことがあり、なんとタンザニアの農村にもNGOの仕事で滞在していたことがあるという。なんという偶然。
ここはアブサロン教会だったのだけど、2013年に閉鎖されることになり、日本でも展開している雑貨店「フライング タイガー コペンハーゲン」の創設者でもある起業家レナート ライボシツ氏が購入し、2015年に誰でもウエルカムのくつろげるコミュニティセンターとして生まれ変わった、ということをAさんが教えてくれた。このようなディナーは毎晩開催されているし、他にも卓球、ヨガ、ダンス、語学、音楽などのイベントが毎日目白押しだそうだ。「地域の人々はもちろん、多くの人をつなげてくれる、大人も子どももゆったりと楽しく過ごせる場所なのよ」と。
食事もどれもおいしい。野菜の旨みがとろけるようなシチューや、ほんのり甘くて優しい味のパン、そして皮付きイモのフライドポテトは何個でも食べられそうだし、濃いめだけどクリーミーなマヨネーズのようなアイオリソースはパンだけでなくポテトにもシチューにもよく合う。
お代わりもできるとのことで、我らの旺盛な食欲?を見て、Aさんが追加を取りに行ってくれた。
娘は話の弾んだAさんに連絡先を聞いて、教えてもらっていた(その後すぐに彼女から連絡が来たという)。前回のアブサロンで同じテーブルだったアメリカ人の学生とも連絡取り合っているらしい。頼もしい娘の積極性だが、そういうつながりを持ちたくなるのは、同じ場所で同じ釜の飯を食べたからこそなのかもしれないね。
三つ編みの若き妻は妊婦さんで、クリスマスの頃に赤ちゃん(第一子だそうだ)が生まれるのだという。無事の出産を願う言葉をデンマーク語で教えてもらって、別れ際に彼女に告げたのだが、なんて言葉だったか、記憶力に自信のないわたしはもう忘れてしまった。けれど、元気な赤ちゃんと新年を迎えている姿を想像することはできる。
ほぼ1時間ちょっとの食事時間を一緒にいただけなのだけど、思い出すと、ろうそくに照らされているような明るくあたたかな気持ちになる。遠くから来たものも違和感なく混じることができるコミュニティの懐の深さ、毎日、200名の人たちの胃袋を予算に優しいおいしい食事で満たし、知らない人同士を引き合わせ笑顔にするディナーのできる空間があるすばらしさが、今も深く印象に残っている。

アブサロンのサイトのトップページ https://absaloncph.dk/en/
アブサロンのディナーはオンラインで予約ができる。(当日の16時まで。残席があれば、当日17時から会場で販売するそうだ)娘に予約してもらった。
アブサロンに予約していた12月16日、ホテルから会場までの時間配分をちょっと間違って遅れそうになり、娘とわたしは焦っていた。ディナーは6時からで、その15分前までに到着していないと、なんと予約が取り消されてしまうのだという。地下鉄のEnghave Square駅から徒歩6分。駅を出た我らは小雨降る中、傘もささずに(デンマークの人はほとんど傘をささない)小走りで急ぐ。急いだ甲斐があって締切2分前くらいに煉瓦造りの建物に到着できた!ホッ。

元教会だったという天井高く細長く広いスペースには、縦長にテーブルがいくつか並べられ、もう多くの人々が着席している。お喋りする声が高い天井にこだましているようだ。
受付のお兄ちゃんに娘が予約名を告げ、我々の座席を教えてもらう。向かって右側の一番端の並びの真ん中辺だった。8人がけのテーブルが5つ縦に繋げられ、それが4列ある。一段高くなっている舞台のような場所にもテーブルが3つか4つ置かれていたから、200人近い人々が一緒に食事をとることになる。

そして、そのテーブルにたまたま居合わせた8人が、食事時間の間、”運命共同体”のようになるように仕掛けられているのだ。
我らのテーブルにはすでに、50代くらいの女性二人組と30歳前後くらいの男女のカップルが座っていた。わたしの座った席の前には8人分のお皿が積み重ねて置かれ、その上にカトラリーも乗せられていた。それを一人一人に配るのはわたしの役目らしい。手渡すときに「どうぞ」「ありがとう」などのやりとりから会話が生まれていくことになる。
同テーブルの人たちは、4人ともデンマーク人で、女性二人組は友人同士でときどきアブサロンに来ているという。そのうちの一人の息子さんは日本人と結婚しているとか。カップルは若夫婦で、夫は昨年日本の大学院に半年ほど留学していて、愛らしい三つ編みの妻も同行していたのだという。なんという日本繋がりの偶然。
あとの二人、遅刻に焦っていた我々よりも後にやってきた彼女らもデンマーク人で、40代後半くらいの女性Aさんと彼女の友人の高校生の娘さんという組み合わせ。Aさんはとても社交的な人で、会場の写真を撮っていた私たちを見て、到着早々「あなたたちの写真も撮ってあげる」と声をかけてくれるのだった。
前回、娘が参加した時のテーブルには外国人が多く、ノルウェーやアメリカから来ていた若者たちがいたと言っていたから、アブサロンディナーでの巡り合わせも時によってさまざまなのだね。

前回、娘が参加した時に撮影。テーブルの並び方や会場の広さがわかる。前回は余裕を持って到着したらしい。
ビールやソフトドリンクの飲み物などの購入もできる。我々はディナーの後、クラフトビール屋にいく予定だったので、ピッチャーに入っている無料のお水をいただいた。
さて、いよいよ6時の開始時間となり、スタッフのお兄ちゃんがマイクを取って、開始の挨拶をする。外国の人もいるから本日はデンマーク語ではなく、英語で話すという。家にいるかようにくつろいで食事をしてねというウエルカムの言葉をもらった後、食事を取りに行く順番を告げられる。我々のテーブルの列のナンバリングが1とされたので、最初に取りに行けるのだなとAさんたちと共に喜んだのも束の間、「2番の列のテーブルの人からどうぞ」と言われ、がっかりして周囲の人々と笑いあうのも一興。

各テーブルで2人が代表してキッチンに食事をとりに行くことになっており、友人女性二人組が立候補してくれた。3つの大皿で運ばれてきたのは、カボチャ、トマト、ピーマン、玉ねぎの野菜シチューとパセリの乗った皮付きの小さなジャガイモのフライ、そしてアイオリソースとオニオンブレッドという家庭料理のような嬉しいメニューだ。(この日はベジタリアンメニューだったけど、肉魚料理が出る日もある。でもそういった時にもベジタリアン用のメニューも用意されているようだ)

取り分けていただく時にも、アイオリソースの中味(ニンニクやライム、卵黄などだそうだ)を若夫婦の夫の方が教えてくれたり、誰かの家に招かれているような、和やかな会話が生まれていく。Aさんは今までいろいろ世界を旅していて、日本にも行ったことがあり、なんとタンザニアの農村にもNGOの仕事で滞在していたことがあるという。なんという偶然。
ここはアブサロン教会だったのだけど、2013年に閉鎖されることになり、日本でも展開している雑貨店「フライング タイガー コペンハーゲン」の創設者でもある起業家レナート ライボシツ氏が購入し、2015年に誰でもウエルカムのくつろげるコミュニティセンターとして生まれ変わった、ということをAさんが教えてくれた。このようなディナーは毎晩開催されているし、他にも卓球、ヨガ、ダンス、語学、音楽などのイベントが毎日目白押しだそうだ。「地域の人々はもちろん、多くの人をつなげてくれる、大人も子どももゆったりと楽しく過ごせる場所なのよ」と。
食事もどれもおいしい。野菜の旨みがとろけるようなシチューや、ほんのり甘くて優しい味のパン、そして皮付きイモのフライドポテトは何個でも食べられそうだし、濃いめだけどクリーミーなマヨネーズのようなアイオリソースはパンだけでなくポテトにもシチューにもよく合う。
お代わりもできるとのことで、我らの旺盛な食欲?を見て、Aさんが追加を取りに行ってくれた。
娘は話の弾んだAさんに連絡先を聞いて、教えてもらっていた(その後すぐに彼女から連絡が来たという)。前回のアブサロンで同じテーブルだったアメリカ人の学生とも連絡取り合っているらしい。頼もしい娘の積極性だが、そういうつながりを持ちたくなるのは、同じ場所で同じ釜の飯を食べたからこそなのかもしれないね。
三つ編みの若き妻は妊婦さんで、クリスマスの頃に赤ちゃん(第一子だそうだ)が生まれるのだという。無事の出産を願う言葉をデンマーク語で教えてもらって、別れ際に彼女に告げたのだが、なんて言葉だったか、記憶力に自信のないわたしはもう忘れてしまった。けれど、元気な赤ちゃんと新年を迎えている姿を想像することはできる。
ほぼ1時間ちょっとの食事時間を一緒にいただけなのだけど、思い出すと、ろうそくに照らされているような明るくあたたかな気持ちになる。遠くから来たものも違和感なく混じることができるコミュニティの懐の深さ、毎日、200名の人たちの胃袋を予算に優しいおいしい食事で満たし、知らない人同士を引き合わせ笑顔にするディナーのできる空間があるすばらしさが、今も深く印象に残っている。
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