ウジャンジャなカエルの物語

前々回のブログで登場したウォルター ボゴヤ(Walter Bgoya)さんの絵本のご紹介。日本の絵本のストーリーとは一味か二味違います。

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 今回は「The Story of the Crow and the Frog」(カラスとカエルの物語)。ボゴヤさんの絵本はスワヒリ語バージョン※1もあるのだけど、今回は英語版しか手に入リませんでした。以下、あらすじです。

            


 とある海辺でカラスに「あんたはのろのろでかわいそうだ」と言われたカエルが「その気になれば早いのさ」と反論した上に「どんなにオイラが早いか見せたろか」と吹っかけたので、カラスとどっちが早いかの競争を翌日に行う羽目になります。

 カエルはすぐに仲間のカエルたちを大勢招集し、明日のレースにどう勝つかの話し合いを始めます。(この辺で最初のカエルが年長雄ガエルということがわかってくる)
 「ジャンプするだけのオラたちがどうやってカラスに勝つんじゃ〜!」と年長ガエルの無茶振りをなじる声多数の中、小さな女の子ガエルがアイデアを出すのです。「こうすれば勝てるし、カラスに尊敬されるでしょう」と。彼女が何度も「We can win(わたしたちは勝てる)」と叫んでやっと年上のカエルたちが”しぶしぶ”黙ったというのも現実のあるあるを反映しているようで苦笑いしちゃいましたが。(諦めないことが大事なのね!)

 その作戦とは? 
 レースの始まる前にそのコースの中の茂みに列になったカエルたちがそれぞれ少しずつ離れた場所に待機します。カラスはその上空を飛ぶのですが、カラスが「カエル、どこにいる?」と尋ねてきたときに、「ここだよ、あんたの手前にいるよ」とちょうどいい場所に待機していたカエルが答えるというもの。どんなにカラスが早く飛んでも常にカエルがその前方にいるというわけです。

 すんなり決まったわけではなく、その後も長い話し合いが続いたそうですが、女の子ガエルの案が採用となりました。(その作戦、カエルの声が老いも若きも女も男も一緒なのか?とか、カラスと実際に遭遇するスタートと終了時のカエルは別ガエルだろうけど、カラスは気づかないのか?など考えるとツッコミどころもいろいろありますが🐸)

 そして翌日のレースでカエル(チーム)はみごと作戦通りに勝利するのです!
 カラスもいいやつで素直に負けを認めるのでした。そのカラスにレース終了ポイントにいたカエルが「あんたも勝ったんだよ」と語りかけます。「今からはお互いにリスペクトし合おうよ」と。そして抱き合う二人の姿が描かれます。

 結局カラスはカエルの”作戦”を知らないままです。でもそれでいいのだと。

 絵本の最後のページには「強いものが常に勝つとは限らない」「小さな者でも賢くなって年長者に教えを説くことができるのだ」とあって、絵本を読む小さな人たちに勇気を与えるのでした。

            



 まさにカエル(チーム)の作戦は、ウジャンジャな作戦なのでは?
 ウジャンジャ(ujanja)というスワヒリ語は「ずる賢い」と訳されることもあるけれど「社会のなかでうまく生きていくことのできる賢さ」(by 小川さやかさん※2)なのだそうです。

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 日本の子ども向けの絵本だったらこの”作戦”は採用されないですよねええ。。でも生きていくために”賢く”使える力があることは、それを使って分かり合えなかった相手と分かり合え、生きやすくなるのだったら、その存在(ウジャンジャ)を知り、我が物としていくことは、特に弱い立場にあるものにとって生きていく力になるよねえ、と思うのです。

 絵は全体的に柔らかいトーンで、ふんわりした雰囲気です。レース中のカエルたちの表情もなんか楽しげなのでした。





※1:スワヒリ語版のタイトルを調べてみたところ「Hadith Ya Kunguru Na Chura Mzee」(カラスとMzeeガエルの物語)と、Mzee(スワヒリ語で年長者、長老、年配者などの意味があり、尊敬の意味も含まれることが多いから英語に訳しにくかったのかな。

※2: 小川さやかさんへのインタビュー記事より https://www.toshin.com/sekai/interview/03/

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