CD”驚異のイリンバアンサンブル”☆耳のごちそう
久しぶりにフクウェ・ザウォセと仲間たちによる名盤『驚異のイリンバ・アンサンブル』を聴いた。『驚異の』のもっと上の表現を探したくなる、太さや色合いの全く違う糸を自在に組み合わせた見たこともないすばらしい織物に包まれているような演奏。酔いしれるような親指ピアノのイリンバやひょうたんを共鳴胴にした弦楽器ゼゼなどの音色や変幻自在の歌声が組み合わさった珠玉の演奏が7曲も耳を楽しませてくれる。まさに耳のごちそう。

1989年の3月の日本でのスタジオ録音。大橋力さんのライナーノーツによるとこのJVCワールドサウンドシリーズの特に民族音楽では、フィールド録音が多かったのだが、「イリンバをはじめとする繊細微妙な楽器の音色と例を見ないくらいの低音域の広がり」「多く含まれる雑音成分」を再現するためにはライブ録音よりスタジオ録音の方が有利と判断したそうだ。
今も手に入るし、試聴もできる⇒https://victor-store.jp/item/34038/
この時の奏者は三人は皆、村の音楽の名手からスカウトされたタンザニアはバガモヨにある国立芸術大学の教師兼奏者。
空を駆けてゆくような澄んだ高い声から地を這うような低い声までのバリエーションのある”七色の声”をもち、自作のイリンバやゼゼを自在に弾きこなすフクウェ・ザウォセ。
小学校の音楽教師からスカウトされ、芸術大学では伝統音楽と西洋音楽(専門はトランペットだという)を教えていた英語もあやつるスポークスマンでもあるディクソン・ムクワマ。(わたしの最初のイリンバの先生でもあった)
ザウォセと同郷のドドマのブギリ村の音楽一家出身でゼゼの名手であり、頭のてっぺんから出るような歌声が人々の心を揺さぶる一番若手のルベレデ・チウテ。

ライナーノーツから拝借:上から時計回りにザウォセ、チウテ、ムクワマ
スタジオ録音でも彼らがリラックスして望めるように、アフリカ音楽に造詣の深い中村とうようさん、江波戸昭さん、成澤玲子さん、そして芸能山城組のメンバーにも加わってもらい「スタジオ内を小さな団欒の場」にかえたそうだ。その心意気がなんともすてき。楽しそうだなあ。

バガモヨの自宅で演奏中のフクウェ・ザウォセ
1989年はわたしがタンザニアに移住した年でもある。3月はまだ東京にいたのだけど、彼らの演奏は聴きに行き損ねてしまった。(同時期に来日した南アフリカの劇団 THE COMMITTED ARTISTSの反アパルトヘイト劇『アシナマリ』は観たんだけど)
今はもう3人ともこの世から旅立ってしまっているけど、タンザニアで重なっていた間にも残念ながら3人のアンサンブルに巡り会う機会がなかった。

フクウェ・ザウォセと彼の一族の楽団CHIBITEと大型イゼゼ
タンザニアに住むようになって割と間もなくバガモヨの芸術大学を訪ねた時にムクワマとチウテの二人の演奏を聴く機会があった。マンゴーの木の下のステージで、青空に響く音楽はそのオーラに包まれて体が浮いていくような気持になった覚えがある。また演奏する二人がめっちゃ楽しそうだったという記憶も残ってる。ムクワマの家族の家がわたしの住んでいた家の近くだということだったので、ずうずうしくも彼にイリンバレッスンをお願いしたのだった。

イリンバ
詩人でもあったわたしの母がタンザニアに来た時にムクワマのレッスン光景に遭遇したときのことを書いたエッセイがある。(ここでは、生徒のことには触れられてませんが。。)
「そのリズムは赤茶色の大地からじかに揺るぎでてくるような力強さだ。イリンバは澄んだ高音から深い低音まですばらしい劇をはらみ、複雑な入り組んだ音色を奏でる。目をつむって聴けば数種の楽器が演奏されているようにさえ思える。音楽はここでは芸術家のものではない。共同体や神や精霊たちに帰するものだという。ムクワマさんがのりにのって演奏すると家の外にひびくその音楽にアフリカの人たちが集まって道ばたで体を揺すり踊りだしていた」
一人でもそんな感じなのだから、それが、それぞれ個性の違う3人のアンサンブルになったら!という演奏が聴ける貴重なCD。

7曲中、『Mateso(苦しみ)』『Nelson Mandela』と2曲もアパルトヘイト政権に抑圧されていた南アフリカの人々へのメッセージを歌う曲が入っている。南アフリカの人々の解放闘争をずっと支援し続けてきたタンザニア。タンザニアと彼らの矜持と時代を感じる。
大型イゼゼの響きに鈴の音がゆったりと絡まる2曲目の『SiSi Vijana(われら若者)』には、”日本の人々と手をつなごう”という意味のうれしい即興?の歌詞も。こういうアドリブが入るのも彼らの演奏のふくらみのあるところ。
最後の曲『Tuna Haki Ya Kuvunia Utamaduni Wetu(わたしたちにはわたしたちの文化を誇る権利がある)』日本語にすると硬いタイトルだけど、風を巻き起こしながらも大草原を自在に駆け抜けてゆくような、むっちゃ広がりのあるイリンバのアンサンブル。ザウォセののびやかな声が「誇るべきアフリカの、タンザニアの文化」を歌い上げる。このサウンド、演奏こそがまさに「タンザニアの誇り」を創り出していくのだと思えてくる。
ずっと文化も政治も「誇れる」タンザニアであってほしいなあ。

1989年の3月の日本でのスタジオ録音。大橋力さんのライナーノーツによるとこのJVCワールドサウンドシリーズの特に民族音楽では、フィールド録音が多かったのだが、「イリンバをはじめとする繊細微妙な楽器の音色と例を見ないくらいの低音域の広がり」「多く含まれる雑音成分」を再現するためにはライブ録音よりスタジオ録音の方が有利と判断したそうだ。
今も手に入るし、試聴もできる⇒https://victor-store.jp/item/34038/
この時の奏者は三人は皆、村の音楽の名手からスカウトされたタンザニアはバガモヨにある国立芸術大学の教師兼奏者。
空を駆けてゆくような澄んだ高い声から地を這うような低い声までのバリエーションのある”七色の声”をもち、自作のイリンバやゼゼを自在に弾きこなすフクウェ・ザウォセ。
小学校の音楽教師からスカウトされ、芸術大学では伝統音楽と西洋音楽(専門はトランペットだという)を教えていた英語もあやつるスポークスマンでもあるディクソン・ムクワマ。(わたしの最初のイリンバの先生でもあった)
ザウォセと同郷のドドマのブギリ村の音楽一家出身でゼゼの名手であり、頭のてっぺんから出るような歌声が人々の心を揺さぶる一番若手のルベレデ・チウテ。

ライナーノーツから拝借:上から時計回りにザウォセ、チウテ、ムクワマ
スタジオ録音でも彼らがリラックスして望めるように、アフリカ音楽に造詣の深い中村とうようさん、江波戸昭さん、成澤玲子さん、そして芸能山城組のメンバーにも加わってもらい「スタジオ内を小さな団欒の場」にかえたそうだ。その心意気がなんともすてき。楽しそうだなあ。

バガモヨの自宅で演奏中のフクウェ・ザウォセ
1989年はわたしがタンザニアに移住した年でもある。3月はまだ東京にいたのだけど、彼らの演奏は聴きに行き損ねてしまった。(同時期に来日した南アフリカの劇団 THE COMMITTED ARTISTSの反アパルトヘイト劇『アシナマリ』は観たんだけど)
今はもう3人ともこの世から旅立ってしまっているけど、タンザニアで重なっていた間にも残念ながら3人のアンサンブルに巡り会う機会がなかった。

フクウェ・ザウォセと彼の一族の楽団CHIBITEと大型イゼゼ
タンザニアに住むようになって割と間もなくバガモヨの芸術大学を訪ねた時にムクワマとチウテの二人の演奏を聴く機会があった。マンゴーの木の下のステージで、青空に響く音楽はそのオーラに包まれて体が浮いていくような気持になった覚えがある。また演奏する二人がめっちゃ楽しそうだったという記憶も残ってる。ムクワマの家族の家がわたしの住んでいた家の近くだということだったので、ずうずうしくも彼にイリンバレッスンをお願いしたのだった。

イリンバ
詩人でもあったわたしの母がタンザニアに来た時にムクワマのレッスン光景に遭遇したときのことを書いたエッセイがある。(ここでは、生徒のことには触れられてませんが。。)
「そのリズムは赤茶色の大地からじかに揺るぎでてくるような力強さだ。イリンバは澄んだ高音から深い低音まですばらしい劇をはらみ、複雑な入り組んだ音色を奏でる。目をつむって聴けば数種の楽器が演奏されているようにさえ思える。音楽はここでは芸術家のものではない。共同体や神や精霊たちに帰するものだという。ムクワマさんがのりにのって演奏すると家の外にひびくその音楽にアフリカの人たちが集まって道ばたで体を揺すり踊りだしていた」
一人でもそんな感じなのだから、それが、それぞれ個性の違う3人のアンサンブルになったら!という演奏が聴ける貴重なCD。

7曲中、『Mateso(苦しみ)』『Nelson Mandela』と2曲もアパルトヘイト政権に抑圧されていた南アフリカの人々へのメッセージを歌う曲が入っている。南アフリカの人々の解放闘争をずっと支援し続けてきたタンザニア。タンザニアと彼らの矜持と時代を感じる。
大型イゼゼの響きに鈴の音がゆったりと絡まる2曲目の『SiSi Vijana(われら若者)』には、”日本の人々と手をつなごう”という意味のうれしい即興?の歌詞も。こういうアドリブが入るのも彼らの演奏のふくらみのあるところ。
最後の曲『Tuna Haki Ya Kuvunia Utamaduni Wetu(わたしたちにはわたしたちの文化を誇る権利がある)』日本語にすると硬いタイトルだけど、風を巻き起こしながらも大草原を自在に駆け抜けてゆくような、むっちゃ広がりのあるイリンバのアンサンブル。ザウォセののびやかな声が「誇るべきアフリカの、タンザニアの文化」を歌い上げる。このサウンド、演奏こそがまさに「タンザニアの誇り」を創り出していくのだと思えてくる。
ずっと文化も政治も「誇れる」タンザニアであってほしいなあ。
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