『菜の花の沖縄日記』とコシ シケレリ アフリカ

 昨日は東京にも雪が降った。暖冬と言われているけど、テレビの天気予報で「本日の最高気温」が東京では10℃くらいのとき、沖縄では22℃とか24℃という表示を見ると南国育ちの(ではなく正確には南国暮らしが長かった)わたしは、ああ、沖縄がうらやましいと身をよじる。

 娘から『菜の花の沖縄日記』という本を貸りた。著者は、沖縄に魅かれて生まれ故郷の石川県を離れ、那覇の珊瑚舎スコーレという学校で高校生活を送った坂本菜の花さん。菜の花というのは本名で「何度踏まれても起きあがる」ということから名づけられたそうだ。いい名前だねえ。

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 この本は菜の花さんが高校に入学したての2015年4月から卒業するまでの3年間の「日記」である。(「北陸中日新聞」に月一で掲載されていたものだそうだ)卒業後の日記と珊瑚舎スコーレとの教師たちとの座談会も載っている。高校生が多くの人たちとの出会いの中で、見た感じた考えた沖縄での日々を綴った本である。

 読んでみてとてもピュアで真っすぐなひとなのだなと思った。
 15歳。わたしがその年ごろだったときはどうだったんだろう。こんなに素直に物事を自分事として受け止め、考えられただろうか。高江の米軍ヘリパットや辺野古の米軍基地建設のための埋め立てに反対している沖縄の人々は、明るいのだと。その明るさがどこから来るのかを知りたいという15歳の菜の花さん。
 珊瑚舎スコーレに併設されている夜間中学に通う、戦争中に学べなかったおじい、おばあの話からも学ぶこと、気づくことがたくさんあったそうだ。

 「珊瑚舎のみんな」で辺野古に行き、辺野古の海の米軍基地建設反対の座り込みをしている人たちに話を聞く。菜の花さんは「国から補償金をもらっているから、簡単に基地反対とは言えない」という基地容認の立場の漁師さんたちの思いも想像してみる。「どんな思いで、あのオレンジ色の数珠つなぎになった浮きを見ているのだろう」
 命の海が埋め立てられていく。

 そして、辺野古を離れる前に珊瑚舎のみんなは「コシ シケレリ アフリカ(Nkosi sikelel' iAfrika)」を歌うのだ。「アフリカ」を「沖縄」に変えて。

 すごいな。珊瑚舎では「コシ シケレリ アフリカ」も歌うんだ。「神よアフリカに祝福あれ」という意味の19世紀末に南アフリカで作られたコサ語のこの歌は、アパルトヘイト下の南アフリカでの抵抗の象徴の歌となり、未だ植民地下にあった多くのアフリカの国々の人々の希望の歌でもあった。

 植民地から独立した国の多くがこの歌を国家にした。ジンバブエ、ナミビアはもう独自の国歌に変えてしまったけれど、独立当初はこの歌が国歌だった。ザンビアは歌詞は変えたが、メロディは今も「コシ シケレリ アフリカ」のものを使っている。

 そして南ア(従来の国歌と2曲を合わせたものになっているが)とタンザニアは今も「コシ シケレリ アフリカ」が国歌である。
 タンザニアではスワヒリ語で「ムング イバリキ アフリカ(Mungu iibariki Afrika)」と歌われる。意味は同じである。
 そのことを知った時、同じメロディや同じ意味の歌詞の国歌が別の国でも国歌として歌われているということに汎アフリカ的なものを感じ、とても感銘をうけた。

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タンザニア、キンゴルウィラ村の小学生たち

 とくに1番の最後の「Tubariki , Watoto wa Afirka」「アフリカの子どもたちに祝福あれ」というところが好きだ。タンザニアだけじゃなくアフリカ全体、そして何より子どもたちの未来につなげるというところがいいよねえ。
 自国ファーストなんてちっぽけなことをいう政治家が恥ずかしくなる歌なのだ。
 
 そして菜の花さんの本にあるように、沖縄にもつながる歌だ。全ての闘う人たちに響く、彼らを応援する歌でもあるのだと思う。

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 先日行われた台湾の総統選の投票率は74.90%。選挙のときに台湾にいた知人によると集会もすごい人出で盛り上がっていて、香港からも応援に来ている若者たちがいたそうだ。台湾の若者たちも彼らに「香港加油!」(香港頑張れ!)とエールを送っていたという。

 香港のたいへんな状況は続いている。選挙で民意を示しても、事態は変わってゆかない。沖縄に目を向けると日本でも同様な状況が見えてくる。2019年2月に行われた沖縄県民投票では、辺野古埋め立てによる新基地計画について「反対」が72.15%に達したにもかかわらず、埋め立ては続いている。日本政府は投票結果を受け入れない。これって民主主義といえるのか。

 「沖縄加油!」と言うは易しだけど、わたしはどこに立っているのだろう。どうしていけばいいのか、ということを『菜の花の沖縄日記』を読み、沖縄を感じながら考える。菜の花さんと一緒に考える。そういう気持ちになる本だ。

 本書の中では『月を見上げて生きよう』というお話が特に好きだ。沖縄は月なのだそうだ。太陽は厳しく照り付けるが、月は優しいのだと菜の花さんのバイト先のマスターは言うそうだ。「月ぬまびろーま」(月の真昼間)という八重山民謡があるという。首の痛さも忘れるほどまん丸い光の月を見上げ続けるなんてことを最近、わたしはしただろうか。

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