希望の歴史の本たち
夫はライフワークだった「東アフリカ海洋史(東アフリカから見たインド洋西海域史)」をあと4年の間に書き上げたいという希望を持っていた。
かつて「暗黒大陸」と呼ばれてたこともあるアフリカ大陸。そんなことは決してないのだというのだ。
「1世紀に書かれた『エリュトゥーラー海案内記』で、東アフリカ海岸はアザニア(Azania)として触れられている。ここには紅海からインド洋西海域における季節風を利用した貿易が述べられている。アラビア、ペルシア、インドの商人たちがダウと呼ばれる帆船を操り、11~3月の北東モンスーンに乗って東アフリカにやってきて交易し、5~9月の南西モンスーンを待って帰って行く。彼らの取り扱った商品は、東アフリカからは象牙、犀角、鼈甲、コプラなど、逆に鉄器、ガラス器、織物などを持ち込んでいた。二千年をこえるダウ貿易が東アフリカと外部世界をつないでいたのである」
(夫、根本利通著による『カリブ タンザニア 2016/17』の歴史ページより)
そこには文化や民族がまじりあい、新しい文化を生み出す豊饒な世界があったというのだ。海がつなぐ世界。
残念ながらその歴史の本はかきあげることが叶わなかった。そしてたくさんの資料としての歴史関連本を残していった。
タンザニアの大学に寄贈できないだろうかと考えていたら、夫がダルエスサラーム大学留学時代に教わった歴史学のキマンボ先生が今、ダルエスサラームにあるトゥマイニ大学に所属していて、大学に寄贈してくれるなら、喜んで受け取ると言ってくださった。
何人かの方に手伝ってもらいつつ、歴史本を中心に寄贈図書リストを作ったら、英語の本が233冊、スワヒリ語のが38冊、計271冊にもなった。
そして夫の3度目の月命日の5月24日、キマンボ先生とのやり取りを仲介してくれたジャタツアーズのアレックスとともにトゥマイニ大学へ本を運んだのだった。
トゥマイニ大学はミッション系の大学で、ダルエスサラームの校舎は2007年設立だそうだ。イリンガに本校舎があるようで、そちらは1997年の設立。文科系の大学で、ダルエスサラームの校舎には、図書室は現在二つあるが、今後、大きな図書館を作るというプランがあると図書室長のマーガレットさんが教えてくれた。
夫の恩師、キマンボ先生は御年87歳!だそうだが、まだまだ大学で活躍中とのこと。夫のことは残念だったが、本の寄贈はありがたいとおっしゃってくれた。
「この図書室にはない、なかなか手に入らない本がいくつもあるので、とても助かります。学生たちの役にも必ず立つことでしょう」と、マーガレットさんの弁。
わたしが持っていても宝の持ち腐れになるだろうから、この本たちが役に立つなら、ほんとうにうれしい。
トゥマイニ(tumaini) とはスワヒリ語で「希望」のこと。
これらの本たちがタンザニアで歴史を記していく人々の後押しをしてくれることを願って。
希望は生きている。
かつて「暗黒大陸」と呼ばれてたこともあるアフリカ大陸。そんなことは決してないのだというのだ。
「1世紀に書かれた『エリュトゥーラー海案内記』で、東アフリカ海岸はアザニア(Azania)として触れられている。ここには紅海からインド洋西海域における季節風を利用した貿易が述べられている。アラビア、ペルシア、インドの商人たちがダウと呼ばれる帆船を操り、11~3月の北東モンスーンに乗って東アフリカにやってきて交易し、5~9月の南西モンスーンを待って帰って行く。彼らの取り扱った商品は、東アフリカからは象牙、犀角、鼈甲、コプラなど、逆に鉄器、ガラス器、織物などを持ち込んでいた。二千年をこえるダウ貿易が東アフリカと外部世界をつないでいたのである」
(夫、根本利通著による『カリブ タンザニア 2016/17』の歴史ページより)
そこには文化や民族がまじりあい、新しい文化を生み出す豊饒な世界があったというのだ。海がつなぐ世界。
残念ながらその歴史の本はかきあげることが叶わなかった。そしてたくさんの資料としての歴史関連本を残していった。
タンザニアの大学に寄贈できないだろうかと考えていたら、夫がダルエスサラーム大学留学時代に教わった歴史学のキマンボ先生が今、ダルエスサラームにあるトゥマイニ大学に所属していて、大学に寄贈してくれるなら、喜んで受け取ると言ってくださった。
何人かの方に手伝ってもらいつつ、歴史本を中心に寄贈図書リストを作ったら、英語の本が233冊、スワヒリ語のが38冊、計271冊にもなった。
そして夫の3度目の月命日の5月24日、キマンボ先生とのやり取りを仲介してくれたジャタツアーズのアレックスとともにトゥマイニ大学へ本を運んだのだった。
トゥマイニ大学はミッション系の大学で、ダルエスサラームの校舎は2007年設立だそうだ。イリンガに本校舎があるようで、そちらは1997年の設立。文科系の大学で、ダルエスサラームの校舎には、図書室は現在二つあるが、今後、大きな図書館を作るというプランがあると図書室長のマーガレットさんが教えてくれた。
夫の恩師、キマンボ先生は御年87歳!だそうだが、まだまだ大学で活躍中とのこと。夫のことは残念だったが、本の寄贈はありがたいとおっしゃってくれた。
「この図書室にはない、なかなか手に入らない本がいくつもあるので、とても助かります。学生たちの役にも必ず立つことでしょう」と、マーガレットさんの弁。
わたしが持っていても宝の持ち腐れになるだろうから、この本たちが役に立つなら、ほんとうにうれしい。
トゥマイニ(tumaini) とはスワヒリ語で「希望」のこと。
これらの本たちがタンザニアで歴史を記していく人々の後押しをしてくれることを願って。
希望は生きている。
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