ほとばしる「芸術の家」の歴史

 表紙では、ジョージ・リランガのシェタニ(精霊)がじっとこちらを見つめている。ずっしりしたオールカラーの130ページの本、『Inspired/Maono』の中には、20年以上にわたってタンザニアのアート界を牽引してきたニュンバヤサナー(芸術の家)の歴史が詰まっているのだった。(スワヒリ語版、英語版あり)

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 1969年にタンザニアに宣教に来たアメリカ人のシスター・ジーンは、「木を作ったのは、神だけれど、木を芸術作品に変えることができるのは、人間だけ」「タンザニアの人々にも芸術で食べていける人たちが出てきてほしい」という思いからニュンバヤサナーの設立を思いついたという。

 まだ独立して10年足らずの若いタンザニア。その国づくりへの熱気とシスター・ジーンの願いが結びつき、タンザニアの文化を盛り上げるために熱心だったニエレレ初代大統領の支援を得て、マンスフィールド通りにニュンバヤサナーが公式オープンしたのが1974年のこと。
 若手芸術家たちの研鑽と発表と販売の場として、また、障害を持った人々の技術を磨き、生計を立てる場として生まれたのだった。
 
 画材を手に入れるのも大変だったので、ニュンバヤサナーの工房で紙を手作りしていた時代もあったそうだ。板とインクなら入手しやすいから、エッチングをしよう!などと臨機応変に対応していった様子もシスター・ジーンのインタビューからうかがえる。結果的に多くの作家たちがエッチングの腕を磨くことになり、その作品が売れてニュンバヤサナーの発展や、北欧などでの展覧会につながったとか。

 ジョージ・リランガをはじめとして、フランシス・イマンジャマなど22人の芸術家たちの仕事も紹介されている。そのうちの何人かのインタビューも載っている。作家やその卵たちは、ニュンバヤサナーで一緒に生活し、ひとつ釜の飯を食う家族のようだったそうだ。

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裏表紙より。G.Lilanga作品の一部


 その22人のうち、7人がムトワラ、リンディなどの南部出身で、リランガを含む5人が当時はまだポルトガルの植民地だった隣国、現在のモザンビークから国境を越えてやってきた人たちなのであった。明記されていない人もいるけど、そのほとんどがマコンデ人であろう。もともと地元で伝統的に彫刻を作っていたのが、ニュンバヤサナーで絵を描き始めたという人も多かった。また、国籍や生まれた国がどこだって関係ないよ、一緒にやろうやってていうアフリカ的おおらかさが、豊かな文化をはぐくんできたんじゃないかって気もした。

 この本で紹介されている女性作家はサロメ・ソコひとりきりで、(ニュンバヤサナーで活躍していた女性作家はもう少しいたのだけど)、時代的制約はあったとは思うが、残念なことだ、とシスター・ジーンも述べていた。時代は変わってきてるよね。

 現在もニュンバヤサナーはオールド・バガモヨ・ロード沿いのアメリカ大使館そばにあり、若手芸術家のためのワークショップなども行われているそうだ。

 荒削りではあるけれど、これから羽ばたいていくぞという熱気の感じられる作品が詰まった歴史的な本である。
 裏表紙にその一部分が載っているけど、ジョージ・リランガがニュンバヤサナーの作家や職人たちの仕事のようすを描いた作品にあったかさがあり、とてもいい。





 1冊40,000シリング。Vijana Vipaji Foundationから出版。
 現在(4/14)なら、JATAツアーズの事務所に英語版5冊、スワヒリ語版1冊あり、お分けできます。

この記事へのコメント

maskini
2013年04月15日 02:13
面白そうな本ですが、少々お高いですね。。。。貸し本はございますか?
asami
2013年04月16日 13:35
貸し本はないのです。。。
nanayonjo
2013年04月16日 19:57
しばらく(って2日くらいかな・・・)考えたのですが、やっぱり欲しいです。
日本にいても買い求めることは可能でしょうか???
asami
2013年04月17日 02:39
それはうれしいですが、タンザニアで発売されたばかりなので、日本では入手できないと思います。
こちらから送ると、けっこう上質紙を使っているので、送料がかさむと思います。
タンザニアに近いうちに来られる予定があれば、取り置きしておきますよ。
あるいは託送を頼めそうな知人がタンザニアにいるのなら、託すこともできるかもしれませんが。
nanyonjo
2013年04月17日 22:37
ありがとうございます!
うーん、残念ながら見送ったほうがよさそうです。。。
とりあえず、夫の出張があるよう、念じてみますね・・・!?
asami
2013年04月19日 00:31
そうですか…。チャンスが見えたらご連絡くださいね。
スワヒリ語版は予約が入ってしまいましたが、英語版は今のところまだ4冊あります☆
kalnico
2013年04月29日 04:24
私も欲しいなぁ。。でも、日本に送ると、高いんですね。。。
40000シリングって、日本円でおいくら位なんでしょうか…
asami
2013年04月30日 02:26
うれしいコメントをありがとうございます。。。
例えばEMSで送るとしても60,000シリングくらいかかっちゃうので、本題と合わせて10万シリングを超えてしまうかと。1円がだいたい現在17シリングほどなので、5,880円と高くなってしまいますね…。うーん。
そのうち、日本でも手に入るようになることを願って。

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